■公益通報者保護法と解雇問題

公益通報者保護法は、「企業や官庁などの不正行為に対し、告発した者を解雇などから守る」という趣旨です。保護対象は、パート、アルバイト、派遣労働者、社員、公務員、退職者を含む内部告発者(公益通報者)です。

平成16年6月18日公布され、公布日から、2年以内に施行し、施行後5年を目処に見直しされるとあります。

公益とは、個人の生命や身体の保護、消費者利益、環境保全、公正な競争や、刑法、食品衛生法、証券取引法、JAS法、大気汚染防止法、廃棄物処理法、個人情報保護法、その他政令で定める法律違反に関してです。

施行はまだですので、実際の運用は不明ですが、会社や官公庁の活動や方針と公益侵害の線引きは、正確に出来るのでしょうか?
公益通報に該当しなかった場合、その公益通報者はどうなるのでしょうか?

就業規則には、会社の信用失墜や不利益条項等は、一般的に解雇要件に記載されています。
また、「公益通報」というカードを悪用する人がいないとも限りません。もちろん、公益通報者に不正の目的がないことが保護要件に入っていますが、実効性はいかがでしょうか?

○保護される場合○ 備考
従業員の通報
元従業員の通報
派遣社員の通報
取締役は、実態が労働者である者を除いて、保護されない
外資系企業の従業員の通報 日本国内にあれば、外国人社員も保護される
犯罪行為の共犯者が通報 通報した点についての不利益は保護されるが、その元々の犯罪行為への加担は保護されない
勧告等権限を有しない
行政機関への通報
結果的には、保護される
通報する前に弁護士等に相談 守秘義務を負う者である弁護士等への相談であり、通報ではないため、保護される

商法違反である利益供与についての通報は、明記されていないが、保護される方向にある。
独占禁止法違反についての通報は、明記されていないが、保護される方向にある。
それに替えて、個人情報保護法をまずは明記している。

 

×保護されない場合× 備考
取引先社員又は事業者の通報 自社の労働者の通報のみが保護の対象
同業他社への通報 競争相手は、正当な利益を害する恐れがある
匿名での通報 匿名であれば解雇の恐れが元々存在しない
金品を受け取る目的の通報 公益通報の名を借りた誹謗中傷による莫大な損害を与えるような濫用を許さない
他人に損害を加える目的の通報
取締役が通報 実態として労働者である場合を除く
通報先と通報の順序 通報出来る最低要件
1)内 部
(会社内での上司その他)
通報すべき事態が、まさに生じようとしていると思えばOK
2)勧告等の権限を有する
 行政機関
通報すべき事態が、まさに生じようとしていると信ずるに足る相当な理由ある場合
通報すべき事実の立証責任が通報する本人にある!
3)外部通報 通報すべき事態が、まさに生じようとしていると信ずるに足る相当な理由ある場合
通報すべき事実の立証責任が通報する本人にある!

かつ、次のいずれかに該当
  • 内部通報又は行政機関への公益通報をすれば解雇等不利益を被ると信ずる足りる相当な理由がある場合
  • 内部通報すれば、証拠隠滅等のおそれがあると信ずるに足りる相当な理由がある場合
  • 内部通報又は行政機関への通報を正当な理由無く要求された場合
  • 書面により内部通報をした日から20日以上経過しても、なんら調査等が行われない場合
  • 個人の生命又は身体に危害が発生し、又は発生するに急迫した危険があると信ずるに足る相当の理由がある場合
通報者の義務 公益通報者は、他人の正当な利益、公共の利益を害することのないように努めなければならない。
もし、公益通報に伴って、第三者の個人情報を漏らす等、他人の正当な利益や公共の利益を害した場合には、刑事上、民事上の責任が問われる可能性が考えられる。
通報された事業者の義務 通報対象となる事実の中止その他是正ために必要な措置を取った場合は、その旨を通報者に遅滞なく通知するよう努めなければならない。
通報を受けた行政機関の義務 必要な調査を行い、通報対象事実がある場合は、法令に基づく措置をその他適当な措置を取らなければならない。
通報を受けた行政機関が、勧告等の権限が無い機関の場合は、権限のある行政機関を通報者に教示しなければならない。
行政機関から行政機関へは、連絡しないということです。

解雇問題に新局面が生まれそうな気がしますし、何も変わらないような気もします。
社会的に責任のある大企業、官公庁の自浄化を促進するのに役立つのかを期待したいといった所なのでしょうか。
詳細は、以下を御覧下さい。
http://www.consumer.go.jp/kankeihourei/koueki/index.html